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これが攻守連動リスクマネジメントだ
―新時代のJapan
Qualityを実現する―
はじめに
「リスクはビジネス価値創出の源泉である」
このように考える私は、ビジネスの現場で使えるリスク見極め力を大切にしてきました。その意思を込めてリスク職人K.Mishimaと名乗っています。総合電機グループ3社において30年以上にわたり、リスクマネジメントの職人技を磨き続け、製品安全リスク、品質リスク、プロジェクトリスク、セキュリティリスク、エンタープライズリスク、そしてAIリスクに取り組んできました。
近年、多様化したリスクへの対応が求められる中で、新たな価値に挑戦しつつ失敗を未然に防ぐ実践ノウハウには価値があると考え、本書を執筆しました。
本書は、次の3部構成としています。
第Ⅰ部 着眼点と方向性
第Ⅱ部 リスクマネジメントの実践ノウハウ
第Ⅲ部 リスクマネジメントを習慣にする実践ノウハウ
第Ⅰ部では、今の時代を見る着眼点と、これからの組織が進むべき方向性を示します。単に手法やツールを解説するだけでは、リスクマネジメントは守りの活動に限定されてしまいます。そこで最初に、現代のリスクマネジメントが向き合う時代背景を示し、「なぜ、リスクマネジメントを攻守連動にする必要があるのか」を読者と共有することを出発点としました。第Ⅱ部では、リスクを取り扱うための基礎的かつ実践的なノウハウを整理します。リスクという概念を整理し、チームで気付きを共有してから有効な対応策を導き出すまでの勘所を、理論やフレームワークを拠り所として解説します。 読者がリスクマネジメントを守りのために行うだけでなく、未来を切り開き、新たな価値を創造する技として活用できるようにするものです。第Ⅲ部では、リスクマネジメントを仕組みとして組織に定着させる方法を扱います。戦略マネジメントや組織マネジメントの理論を実践に結び付けて、「リスクマネジメントを、特別な活動ではなく日常に埋め込む」ことを可能にするものです。日々の会議、顧客との対話、設計資料の作成、運用の監視等、現場の動きの中で自然とリスクに対応できるように、習慣化するための勘所を解説します。
本書では、30年を超える下積み経験を元に、実務で即活用しながら2~3年の実践を通じ「自分の技」として会得できるように凝縮したノウハウを提供し、リスクマネジメントという仕事の魅力をお伝えします。リスクを恐れるのではなく味方にして、新たな価値を生み出す楽しみを知っていただくことが、リスク職人K.Mishimaの願いです。
目次
11.2 施策と結果の関係を見る-BSC(Balanced Score Card)
12.1 プロセスマネジメント(定義編)の基本-バリューチェーンモデル
12.2 独自の工夫をする-RBV(Resource Based View)
13.1 プロセスマネジメント(管理編)の基本-日常管理・審査・監査
14.3 成熟と変革のサイクルを回す-ダイナミック・ケイパビリティ
第Ⅰ部 着眼点と方向性
第Ⅰ部では、今の時代を見る着眼点と、これからの組織が進むべき方向性を示します。単に手法やツールを解説するだけでは、リスクマネジメントは守りの活動に限定されてしまいます。そこで最初に、現代のリスクマネジメントが向き合う時代背景を示し、「なぜ、リスクマネジメントを攻守連動にする必要があるのか」を読者と共有することを出発点にしました。
第1章 Japan Qualityの変遷
近い将来、複雑な社会課題を解決して「社会の質」を高める製品・サービスが、日本から次々と誕生したら素敵だと思いませんか。
モノづくりの品質ばかりを追求していると、価値を生み出すコトづくりの方法は見えなくなります。
肝となるのは、Japan Qualityの歴史から学び、その本質を未来に継承するために、モノづくりの技術とコトづくりの知恵を束ねてビジネスプロセスを再構築することです。
1.1 QC・TQC・TQMの発展と課題
日本の品質マネジメントの歴史は、第二次世界大戦後に大きな転換期を迎えました。戦争によって熟練職人の命が失われ、日本の製品は「安かろう悪かろう」になってしまったのです。そこで、製造業を復興するために米国からQC(Quality Control)を導入し、工程のばらつきを抑え安定した製品品質を実現することができました。その後、QCを製造部門だけでなく、設計部門、営業部門、企画部門等に広げ、各部門の仕事の質を向上させるTQC(Total Quality Control)へと進化しました。さらに1990年代以降は、TQCを経営ツールと捉えて経営と現場の品質活動を統合したTQM(Total Quality Management)へと進化し、品質を基盤として企業価値を高める経営手法になっています。
この歴史的な変遷を通じて、日本の製品は「安くて良いもの」として世界中で評価されるようになりました。しかし、1980年代から始まった国内コストの上昇、円高、旧共産圏の市場開放といった事業環境の変化が、日本製品の「安くて良いもの」という価値を揺るがします。さらに、デジタル技術の普及は、主に電機・IT業界に大きな打撃を与えました。標準化された部品を組み立てることによって十分な品質の製品を作れるようになり、品質で差別化されないコモディティ化した製品が市場に溢れたのです。かつて、日本企業のテレビやパソコンは世界を席巻しましたが、今では、中国企業や韓国企業の製品にその座を奪われています。
なぜ、このような状況になってしまったのでしょうか。TQMは、戦後に急速な経済的発展を実現した日本の経営手法を、米国が研究して体系化したものです。日本の良さが凝縮された経営手法であるにもかかわらず、多くの日本企業では、「製品(モノ)の品質」の管理が成功体験として定着し、TQMの本質を見失ったことが一因ではないでしょうか。創造的に企業価値を高める経営手法としてTQMの本質を学び直すことで、顧客や社会が求めるコトを実現できるようになります。
1.2 コトづくりとしての品質
近年、日本の製造業が苦戦する中で、「モノづくりからコトづくりへ」という言葉が頻繁に使われます。製品がコモディティ化して機能や品質の差が小さくなった今、顧客や社会が期待するコトを実現して差別化する必要性を示す言葉です。技術的に優れたモノづくりだけで、顧客や社会の期待に応えることができるでしょうか。顧客が喜ぶコト、社会に役立つコトを実現するために技術があるのです。
かつて、任天堂のファミリーコンピューターやソニーのウォークマンのように、日本企業はコトづくりをやってきました。Appleは、いつでも新しい楽曲をダウンロードして聞けるコトをiPodとiTunesで実現しました。NVIDIAは、元々は画像処理用であったGPUによってAIの学習・推論を効率良く行うコトを実現しました。「コトづくりのためのモノづくり」をやる企業が新しい価値を生み出しています。顧客や社会が求める品質は「モノづくりよりもコトづくり」であり、企業が持つべき発想は「コトづくりからモノづくりへ」なのです。
1.3 TQMの本質を昇華する
「コトづくりからモノづくり」と考えて行動するうえで、成熟し複雑化した現代では、顧客や社会が望んでいるコトに気付けるかは不確実です。気付いたとしても、実現する方法を生み出せるかは不確実です。さらに、知恵を絞ってアイデアを生み出したとしても、それが顧客や社会に受け入れられるかどうかも不確実です。
コトづくりへの投資には不確実性を伴うからこそ、経営と現場が一体となり、「リスクから価値を生み出す」人と組織を育てましょう。TQMの型を守るだけでなく本質を理解し、時代の変化に合わせて昇華することで、挑戦する人と組織を支える品質マネジメントへ進化させることができます。
第2章 AIの進化とリスク
近い将来、人間とAIが共存する時代が訪れ、一人一人が望んだ生き方や働き方を選べる社会になったら素敵だと思いませんか。
AIの技術的な側面ばかりを見ていると、経済・社会に及ぼす影響は見えなくなります。
肝となるのは、AIの進化がもたらす経済・社会への影響を望ましいものにするために、研究や開発の視点だけでなく品質や経営の視点で取り組むことです。
2.1 第1次~第3次AIブーム
AIの発展は、これまでに三度の大きなブームを経験してきました。まず、第1次AIブームは1950〜1960年代に起こり、推論や探索といったルールベースの技術が研究の中心でした。この時代は学問的な試行が先行し、実用化には至らず 「冬の時代」と呼ばれる停滞期が訪れます。
続く第2次AIブームは1980〜1990年代です。エキスパートシステムに代表される知識表現の技術が注目され、産業界での活用が進みました。仕様や設計どおりに動くかを検証する既存の品質保証手法を適用できたため、比較的導入しやすい技術領域でした。しかし、人間の能力に近づくには至らず、再び「冬の時代」が訪れます。
2000年代以降の第3次AIブームでは、機械学習、とりわけ深層学習が中心となり、画像認識や自然言語処理等、多くの分野で実用化が加速しました。この頃、技術のブラックボックス化が進むとともに、AIの統計的性質がもたらす不確実性の高さによって、既存の品質保証の枠組みでは扱いきれない技術課題が現れました。
2.2 AIブームからAI時代へ
2022年11月にChatGPTが登場して以降、もはや「AIブーム」ではなく「AI時代」に入りました。マーケティングのキーワードとしては「AIブーム」かもしれませんが、仕事でも生活でもAIを使うことが前提の「AI時代」になるでしょう。すでに、様々なLLM(大規模言語モデル)を用いた生成AIサービスは、日常でも仕事でも当たり前に使われ始めています。さらに、ワークフロー実行やデータ編集等のタスクを人間に代わって自律的に行うAgentic AIや、自動運転車やロボットのように物理的動作を伴うPhysical AIの実用化・普及が進みつつあります。AIが事業活動の一端を担うようになり、技術をどのように選択し、どの範囲で活用するのか、さらには結果に対して企業がどのように責任を負うのかが課題です。
2.3 企業の信頼を左右するAIリスク
第3次AIブームの頃、AIの品質保証方法が確立されていないことは、主に開発部門や品質部門が扱う技術課題でした。「AI時代」に入り、AIの課題・リスクは開発部門や品質部門だけが考えることではなく、経済・社会への影響に配慮する企業責任が問われるため、経営課題となっています。例えば、著作物の無断使用による知的財産権侵害、偏った判断による差別や偏見、誤判断による安全性の低下、偽情報の拡散やサイバー攻撃、さらには、デジタルツールへの過度な依存による人の主体性の喪失等、多岐にわたる課題・リスクがあります。これらの課題・リスクは、これまでも人間の行為によってもたらされてきたものです。人間に代わってAIが実行するようになったことが、ガバナンスの脆弱性を浮き彫りにし、経済・社会に対する大きな脅威となったのです。
一方、AIを積極的に活用することによって、経済・社会が抱える複雑な問題を解決する機会が生まれています。例えば、人手不足の解消、エネルギー需給の最適化、交通渋滞の緩和、行政サービスの効率化、教育格差の是正等が挙げられます。機会に投資して挑戦し、AIの進化を人間にとって望ましいものにすることは、攻めのガバナンスの役割です。
従来のガバナンスのままでは、脅威に対応して守り切ることは難しく、機会を活かすための攻めは不足しています。AIリスクへの対応という枠を超えて、ガバナンスの在り方そのものを進化させた企業が、「AI時代」の機会と脅威に対応して信頼を得ることができます。
第3章 課題・リスクの多様化
近い将来、新たな課題・リスクを先読みして、より良い社会へ変えていけるようになったら素敵だと思いませんか。
基準に基づいた管理ばかりに頼っていると、新たな課題・リスクの解決策は見えなくなります。
肝となるのは、多様化する課題・リスクに対して適切にガバナンスを効かすために、課題・リスクの性質に合わせてマネジメント方法を使い分けることです。
3.1 対応方法が明確な課題・リスク
対応方法が明確な課題・リスクとは、過去の知見によって、すでにどう対応すべきかが分かっている領域のことです。例えば、法令遵守、安全基準、品質規格、工程管理の基準等がこれに該当します。
このタイプの課題・リスクは、基準に照らして「合っているか/いないか」を判定することで対処できます。言い換えれば、基準が明確であり、手順やチェックリストを用いることで確実に管理できる領域です。こうした課題・リスクに対しては、判断のばらつきを極力なくし、定型的に処理できる仕組みを整えます。基準に基づく管理は、ガバナンスの土台となり、組織としての再現性と安定性を高めます。
3.2 知恵を絞って対応する課題・リスク
知恵を絞って対応する課題・リスクとは、既存の基準が存在しない、あるいは基準を画一的に適用できない領域で、判断や対応に不確実性が伴うものです。例えば、新規事業、AI活用、社会的に意見が分かれるテーマ等が典型的です。
このタイプの課題・リスクに対しては、机上の分析だけで解決策を決めることは難しく、試行錯誤を通じて理解を深め、関係者の合意形成を図りながら解決策を導き出します。この領域こそ、リスクマネジメントの本質が問われる部分です。
3.3 課題・リスクの性質とガバナンス設計
新しい課題・リスクに対して、適切な基準を定めるためには試行錯誤が必要であるにも関わらず、基準が無いからといって挑戦をためらっていないでしょうか。一方、いつまで経っても基準を定めずに試行錯誤を繰り返し、安定収益化する機会を失っていないでしょうか。課題・リスクの性質に合わせて「基準を定めて管理すべき領域」と「試行錯誤して合意形成すべき領域」を適切に見極め、その両方を支えるガバナンスを構築することで、「リスクから価値を生み出す」人と組織を育てましょう。
第4章 トランスフォーメーション
近い将来、課題・リスクが増えるたびにルールを足すだけでなく、変化に自然と順応する働き方が当たり前になったら素敵だと思いませんか。
ルールのことばかりを気にしているとき、あなたが本来持っている創造性は発揮されにくくなります。
肝となるのは、デジタル技術(D)を活用してビジネスを変革(X)するためにガバナンスの取り組みをSystem of Systemsとして再構築することです。
4.1 トランスフォーメーションとガバナンス
トランフォーメーションの一例として、デジタルトランスフォーメーション(DX)があります。多くの企業が取り組んでいますが、デジタル(D)の技術開発や人材育成に目が向けられ、トランスフォーメーション(X)の視点が欠けているのではないでしょうか。トランスフォーメーションは、単なるデジタル化や業務改善のように、個々の課題・リスクに対応することだけではありません。多様化し相互に影響し合う課題・リスクの全体像を捉え、人間にとって望ましい姿を続けられるように、社会や組織のあり方そのものを変えることがトランスフォーメーションです。従って、社会や組織を統制しているガバナンスのあり方を見直すことが、真のトランスフォーメーションの原動力となります。
4.2 シンプルなルールが人を創造的にする
トランスフォーメーションには、複雑な状況を楽しむくらいの柔軟な発想が必要です。しかし、ルールが複雑で重厚になっていると、人は今のルールを守ることにエネルギーを使い、未来を描く創造性を失ってしまいます。特に、組織の階層や役割毎に個別最適化されたルールがあると、それらを組み合わせた時に複雑で重厚なルールになってしまうため、全体を俯瞰したSystem of Systemsとしてガバナンスを設計することがシンプルなルールにするコツです。
4.3 良い意味でデジタルツールに頼る
デジタル技術の進化は、人間が創造的な仕事に集中できるようにする大きな機会です。例えば、繰り返し作業や単純作業はデジタルツールで自動化、データ連携や可視化ツールを使い情報共有、AIが人間の気付きや判断を支援、といったことが考えられます。「AI時代」は、ガバナンスを原動力にしてトランスフォーメーションする千載一遇の機会なのです。ガバナンスを担当する人々にとって、この機会に経営と向き合いながら「リスクから価値を生み出す」ことに挑戦するかが問われているのです。
第5章 オープンイノベーション
近い将来、企業が互いに競争するだけでなく、より良い社会を目指して協力することが当たり前になったら素敵だと思いませんか。
会社の利益ばかりを気にしているとき、社会や顧客が求めている価値は見えなくなります。
肝となるのは、製品、データ、サービスを連携させて社会や顧客に価値を提供するために、あらゆるステークホルダが協力してリスクに対応することです。
5.1 製品・データ・サービスがつながる社会
近年、製品・データ・サービスが相互に連携し、社会や顧客に価値を提供する世界が訪れています。あらゆるものがネットワークで結ばれ、個々の企業ではなくエコシステム全体としてガバナンスを効かせて価値を創出するのです。例えば、スマートウォッチとスマホが連携して健康に関するデータを管理することは、デバイスメーカー、通信事業者、クラウド事業者の連携によって実現されます。
5.2 自動連携がもたらす価値とリスク
自動的に連携する製品・サービス・データが広がることによって、大きな価値をもたらすことができるかもしれません。一方で、幅広くつながっているからこそ、一つの不具合や誤動作が連鎖し、広範囲に影響を及ぼすかもしれません。例えば、スマートウォッチが扱うデータが医療情報まで広がった場合、より高度な予防医療が実現できるかもしれません。一方で、一部の不具合によって不特定多数の医療情報へのアクセスが遮断されてしまうと、多くの患者に影響が及びます。
健康・医療の他にも、交通インフラにおける連携、物流・サプライチェーンにおける連携等が考えられます。さらに利便性を高めるには、健康・医療、交通インフラ、物流・サプライチェーンを横断した広範囲の連携も考えられます。こうして連携が広がるほど期待できる価値は大きくなるものの、悪い影響の広がりを防ぐ重要性は高まります。
5.3 ステークホルダ連携の前提条件
製品・データ・サービスが相互につながる社会では、一社だけで価値を生み出すことも、一社だけで安全性や品質を担保することも不可能です。他社と情報を共有し連携することは、企業の存続を左右する要素として重要度を増します。確実に成功する保証を求める企業や、安全性や品質を軽視する企業は、連携する仲間から外されるでしょう。攻守連動でバランス良くリスクマネジメントできることで、互いにリスクを共有して挑戦するための信頼関係を築けるのです。
コラム -実践ノウハウの形式知化-
実践ノウハウの形式知化を考えるとき、技術や管理手法の標準化に目が向きがちではないでしょうか。しかし、現代のマネジメントは、個々の技術や管理手法では対処しきれないほど複雑化しています。リベラルアーツを基礎とし、経営学、ヒューマンスキル、技術的知識・スキル、工学的手法・方法論を融合させることで、初めて現代の課題・リスクに向き合う実践ノウハウとすることができます。
◆リベラルアーツが理解力を高める
リベラルアーツ(経済学、社会学、心理学、哲学、統計学 等)は、物事を構造的・多面的に捉えるための基礎知識です。例えば、技術的なリスクを議論するとしても、その背景には人の心理、社会の仕組み、文化の違いがあります。こうした背景を理解してはじめて、技術的に正しいだけではなく社会にとって適切な判断ができるようになります。
◆経営学が組織の方向性を示す
経営学(戦略論、組織論、マーケティング論 等)は、意思決定の考え方を提供します。例えば、戦略論には、新しい技術を採用すべきか、何にどの程度まで投資すべきか、経営の視点で判断するための考え方が示されています。
◆ヒューマンスキルが人の心を動かす
ヒューマンスキル(コーチング、ファシリテーション 等)は、人を尊重してガバナンスやマネジメントを行うために役立ちます。価値を生み出すのは人の行動であり、人を行動に駆り立てるのは人の心なのです。
◆技術的知識・スキルと工学的手法・方法論が実現可能性を支える
技術的知識・スキル(システム・ソフトウェア、電気電子、機械、材料、AI 等)は、社会や顧客が求める価値を製品として実現する基盤です。また、工学的手法・方法論(品質工学、信頼性工学、システム工学 等)は、複雑な課題・リスクに対して効果的に対応できる仕組みを構築するために役立ちます。
◆標準化の功罪
標準規格等は、課題・リスクの大きな見落としを防ぐために役立ちますが、標準規格に準拠していれば安心だと誤解してしまうと危険です。規格類の抽象的な表現の奥底にある、リベラルアーツ、経営学、コミュニケーションスキル、技術的知識・スキル、工学的手法・方法論を拠り所とすることで、個別具体的な課題・リスクに適した対応が可能になります。
これらの理論やフレームワークを詳しく正確に解説することは、各専門分野の学者や評論家に任せます。実務家にとっては、ビジネス活動の現場で活用できる程度まで理解することで十分です。本書では、著者が30年以上の下積み経験を通じて学んだ理論やフレームワークを拠り所とし、実務で即活用しながら2~3年の実践を通じ「自分の技」として会得できるように凝縮したノウハウを、「リスクマネジメント」「戦略マネジメント」「プロセスマネジメント」「継続的改善」「チェンジマネジメント」といったカテゴリーに分類してお伝えします。
第Ⅱ部 リスクマネジメントの実践ノウハウ
第Ⅱ部では、リスクを取り扱うための基礎的かつ実践的なノウハウを整理します。リスクという概念を整理し、チームで気付きを共有してから有効な対応策を導き出すまでの勘所を、理論やフレームワークを拠り所として解説します。 読者がリスクマネジメントを守りのために行うだけでなく、未来を切り開き、新たな価値を創造する技として活用できるようにするものです。
第6章 リスクマネジメントの基本
日頃から、安心できる社会で、未来に希望を抱けたら素敵だと思いませんか。
肝となるのは、リスクを機会と脅威の両面で捉え、未来を先取りした対応と目の前の現実への対応を両立することです。
6.1 リスクとは何か
日本語の辞書で「リスク」を調べると、多くの場合「危機」や「危険」といった意味が示されます。しかし、ビジネスの文脈で用いられるリスクは、それよりも広い概念です。リスクの意味を考える際の拠り所として、国際規格である ISO 31000:2018 の考え方を紹介します。
ISO 31000:2018 におけるリスクの定義には、重要なポイントが二つあります。一つ目は、すでに顕在化している問題や課題だけでなく、将来どうなるか分からない不確かな事柄を指すという点です。より詳しくは、目的の達成を左右する不確かな事柄を指します。そのため、目的を明確にすることが、リスクを明確にする前提条件となります。二つ目は、リスクには好ましくない側面だけでなく、好ましい側面もあるという点です。安全やセキュリティのリスクを扱う場合は、好ましくない事柄を考えることがほとんどです。これに対して、株式投資のリスクを考えると、株価下落(好ましくない)と株価上昇(好ましい)の両面があることをイメージしやすいでしょう。実体経済においても、事業環境の変化を既存事業に対する脅威と捉えるだけでなく、新しい事業を生み出す機会として活かしたいものです。
しかし、人は心理的に損失を避けようとする傾向があるため、好ましくないリスクに目が向きがちです。そうした先入観を和らげるために、リスクの語源は「勇気を出して挑戦する」という意味のラテン語とされていることを思い出すとよいでしょう。リスクマネジメントとは、危険を避けるためだけではなく、不確実性の中で意思決定を行い挑戦するためのものなのです。
6.2 不確かさへの対応
不確かな事柄という意味でリスクを扱うためには、すでに明らかになっている課題やタスクをリスク管理表に記載しないよう徹底します。課題やタスクを明確にするためにリスク分析が必要な事柄だけを、リスク管理表に記載するのです。リスク管理表には、リスク源、起こりえる事象、起こりえる影響、起こりやすさ、リスク対応策を最低限の項目として記載するとよいでしょう。起こりえる影響と起こりやすさは、対策前後の双方を評価し、リスク対応策が十分かどうかを判断するために用います。
さらに、攻守連動リスクマネジメントでは、起こりえる事象を機会と脅威の両面から捉えることをお勧めします。同じリスク源であっても、見方を変えることで機会にも脅威にもなりえます。リスクを取って挑戦するとは、脅威を受け入れることだけではなく、新たな機会を見いだすことなのです。
6.3 機会・脅威への対応
不確かな事柄という意味にこだわりすぎて、目の前にある機会や脅威を見落としてしまうと、重大な失敗につながりかねません。経営に大きな影響を及ぼすリスクについては、すでに明らかになりつつあるものこそ、優先的に対処すべき重要事項となります。
こうした重要事項は、重要リスク一覧やリスクマップを用いて整理し、速やかに意思決定を行い、具体的な行動につなげるべきものです。機会については戦略的に活用してビジネス価値を創出するとともに、脅威については危機管理やインシデント対応を確実に実行しましょう。
リスクマネジメントの基礎を日頃から実践することは、安心できる社会で、未来に希望を抱けるようになる第一歩なのです。
第7章 リスクに気付き易くする
日頃から、リスクの見落としを減らして、後悔せずに済んだら素敵だと思いませんか。
肝となるのは、観点リストとチェックリストを使い分け、創造的な気付きと形式的な確認を両立することです。
7.1 既存フレームワークの活用
リスクの見落としを減らすために、様々な分野のフレームワークで体系的に整理されている、網羅的な観点が役に立ちます。
まず、社会や顧客の観点として、PESTEL、3C、4P、4Cといった経営フレームワークを紹介します。これらは本来、事業分析やマーケティングのための枠組みですが、観点が整理・体系化されているため、リスクの網羅性を確保するうえでも有効です。PESTELは「政治・経済・社会・技術・環境・法規」という外部環境の観点を提供し、3Cは「顧客・競合・自社」という市場構造を整理します。また、4Pと4Cは、提供価値や顧客接点を、企業側の視点と顧客側の視点から整理したフレームワークです。これらは、社会や顧客のニーズを起点にリスクを検討するうえで、業界や技術分野を問わず活用できます。
さらに、ビジネス活動や技術分野別に目を向けると、品質マネジメントの7原則、PMBOK第6版の知識エリア、人間中心のAI社会原則、世界人権宣言等、各分野で体系化された規格やガイドラインがあります。これらは、網羅的にリスク観点を整理するだけでなく、それぞれの観点の意味や背景を理解する上でも有用です。
7.2 リスク観点表の設計と活用
既存フレームワークを活用してリスク観点を整理する方法として、縦軸にリスク源の観点、横軸に影響の観点を配置した「リスク観点表」を紹介します。縦軸のリスク源については、外部リスクの観点と内部リスクの観点の双方を用意するとよいでしょう。
このリスク観点表は、チームメンバーが気付いたリスクを、コミュニケーションを通じて共有するために活用します。具体的には、マトリクス上の該当する位置に、一人一人が気付きを書き込みます。リスク観点を一列のリストとして整理すると、チェックリスト的にリスクの有無を確認するだけの使い方になりがちです。一方、マトリクス形式とすることで、リスク源と影響との関係性を意識しながら検討でき、気付きを促進することができます。
7.3 判断基準と対応方法の切り分け
リスク観点表で共有された気付きの中には、既に判断基準や対応方法が明確になっている事柄も含まれるでしょう。それらを全て同じようにリスク分析の対象とすることは、必ずしも効率的ではありません。判断基準が明確な事柄については、チェックリストとして整理し、確実に管理する方法が適しています。また、対応方法が明確な事柄は、タスクとして確実に実行すべきです。
一方で、判断基準や対応方法が不明確な事柄にこそ、不確実性が存在します。そうした事柄に絞ってリスク管理表で分析・議論することで、重要なリスクに対する理解が深まり、より本質的な気付きを得ることができます。
リスクに気付き易くすることは、リスクの見落としを少なくして、後悔せずに済むようになる第一歩なのです。
第8章 過大評価・過小評価を防ぐ
日頃から、取るべきリスクと避けるべきリスクを見極めて、思い切り挑戦できたら素敵だと思いませんか。
肝となるのは、多様な意見を交わす議論と責任ある判断を両立することです。
8.1 認知バイアスの種類と影響
リスクの存在に気付けたとしても、それを過大に評価して挑戦をためらったり、逆に過小に評価して無謀な挑戦をすると、リスクに気付くための努力が水の泡になります。こうした過大評価や過小評価の背景には、認知バイアスの影響があります。認知バイアスとは、人が物事を判断する際に、無意識のうちに取り入れてしまう「思考の歪み」です。100種類以上の認知バイアスがあると言われています。
例えば、過去の成功体験から自信過剰になりリスクを過小評価したり、最近起きた事故事例に強く影響されてリスクを過大評価したりと、思い当たる場面があるのではないでしょうか。認知バイアスの厄介な点は、本人が自覚しないまま、判断に影響を及ぼしてしまうことです。
リスク評価は、不確実性が高いほど個人の思い込みに左右されやすくなります。認知バイアスの存在を前提として意思決定が行われるよう工夫することで、過大評価や過小評価の可能性を減らすことができます。
8.2 複数視点による評価
認知バイアスの影響を低減するための、単純かつすぐに実行できる方法の一つが、複数の視点を持つ人々で評価を行うことです。そのためには、まず異なる役割や立場のメンバーが意見交換や議論を行える状況を整え、多様な考え方が共有されるようにします。
さらに、その意見交換や議論の場に有識者や責任者が加わることで、専門的判断や意思決定における認知バイアスの影響をより効果的に軽減することができます。
8.3 デジタルツールの活用
異なる役割や立場のメンバーが意見交換や議論を行える状況を整える手段として、デジタルツールの活用は有効です。リスク観点表やリスク管理表に記載された情報をデジタルデータとして共有することで、最新のリスク情報をリアルタイムに把握でき、関係者全員が多様な視点に触れることができるようになります。
異なる役割や立場のメンバーが一堂に会して意見交換や議論を行う場を頻繁に設けることは困難かもしれませんが、デジタルデータに書き込み・閲覧する習慣を定着させることで、日常的にリスクについてコミュニケーションが行われる状況を生み出すことができます。さらに、蓄積されたデジタルデータをAIで分析できるようにすれば、過去の傾向や異常値に基づく客観的な視点が加わり、リスク評価の精度を高めることも可能です。
過大評価・過小評価を防ぐことは、取るべきリスクと避けるべきリスクを見極めて、思い切り挑戦できるようになる第一歩なのです。
第9章 予定調和的な対応を防ぐ
日頃から、課題・リスクへ対応するアイデアが湧き出てきたら素敵だと思いませんか。
肝となるのは、代替策への切り替え準備と最善策を実現する努力を両立することです。
9.1 リアルオプション理論の考え方
不確実性の高い状況下で、予定調和的にならずに意思決定を行うための拠り所とする基礎知識として、リアルオプション理論を紹介します。リアルオプションとは、最初から一つの方策に全てを投資するのではなく、将来の状況変化に応じて実行する複数の選択肢を、あらかじめ準備しておくという考え方です。こうしたオプションは、リスク対応策の選択肢として応用することができます。
9.2 複数シナリオの準備
例えば、経験のない新技術を導入する際に、その技術の開発が成功する前提で投資することは避けるべきです。遅延オプションの考え方を用いれば、まず部分的に試作や検証を行い、その結果を評価したうえで、本格的な開発投資に進むという段階的な対応が可能になります。
さらに、拡張オプションの考え方は、新技術が成功した場合を想定し将来的に別の用途へ展開できるよう準備しておくことを意味します。一方、新技術の評価が期待どおりでなかった場合に備えて、縮小オプションの考え方に基づき、新技術への投資を中止して既存技術で代替できるよう準備しておくことも、賢明な対応と言えるでしょう。
9.3 新技術・未知領域への適用
新技術に限らず、あらゆる未知の領域に挑戦する際に、リアルオプションの考え方を応用してリスク対応することができます。無駄な投資につながることを防げる点はもちろん、複数のオプションを検討する過程から得られる学びも、リアルオプションを活用することによる成果です。
予定調和的な対応を防ぐことは、課題・リスクへ対応するアイデアが湧き出てくるようになる第一歩なのです。
第10章 必要十分な対応にする
日頃から、「どこまでやればよいか」を素早く決断できたら素敵だと思いませんか。
肝となるのは、リスクを許容する判断とリスクを避ける対応を両立することです。
10.1 リスク対応策の選択肢
各リスクに対して必要十分な対応策を見極めて実行するために、国際規格である ISO 31000:2018 に分類・整理されている、リスク対応策の選択肢が役立ちます。
回避と低減は、主に脅威となり得るリスクに適用する選択肢です。移転と保有は、機会と脅威のいずれにも適用できるでしょう。さらに、機会となり得るリスクを保有し増大させることは、攻めのガバナンスで「リスクから価値を生み出す」ことに直結する考え方です。
10.2 対応策のパターン化
リスク対応策の選択肢を活用し、あらかじめ対応策をパターン化して整理しておくことで、迅速にリスク対応策を検討することができます。ISO 31000:2018 に示されている選択肢に加え、製品安全分野で用いられる「本質対策」「防護・検知・回復」「注意表示」といった、対策効果の大きさに基づく区分を選択肢として用いることもできます。
縦軸に ISO 31000:2018 に示されているリスク対応策の選択肢を、横軸に対策効果の大きさで区分した選択肢を配置したマトリクスにリスク対応策の例を記載しておくことで、対策方針と対策効果を取捨選択して必要十分なリスク対応策を、具体的に検討することができるでしょう。
10.3 やりすぎない判断軸
リスク対応策の例が豊富にあると、「できることを全てやれば十分だ」と考えて、必要十
分な対応のつもりが過剰な対応になるかもしれません。「その対策がなければ何が起こるか」と問い直すことで、「特に影響はない」という判断に至る場合もあります。
必要十分な対応を検討することは、「どこまでやればよいか」を素早く決断できるようになる第一歩なのです。
コラム ―リスクマネジメントって、いつやるの?―
リスクマネジメントは、しばしば「ルールで決められた時にだけやるもの」「トラブルが起きたときにだけ必要なもの」となりがちです。これらに加えて、「日頃からコツコツ実践する」ことを大切にしましょう。
◆戦略マネジメントの場面で
戦略マネジメントでは、組織に大きな影響を与えうるリスクを主に扱い判断します。戦略を立案し意思決定する時には、将来起こりえることを想定しながら考えるはずです。どのように考えて意思決定したかを表現するために、リスクシナリオ、リスクマップ、リスク選好等の方法があります。
◆プロセスマネジメントの場面で
プロセスマネジメントでは、エンジニアリングとマネジメントの両面でリスクを抽出して評価し、必要な対応を行います。技術者も管理者も、日頃から様々なリスクを想定して仕事を進めているはずです。FMEAやFTA等、扱うリスクの種類に合わせた手法やフレームワークは、リスクへの対応状況を整理して説明やレビューを行う際に役立ちます。
◆継続的改善の場面で
継続的改善では、活動を振り返って改善すべき問題を見つけるとともに、将来に向けて先取りして対応すべきリスクを扱います。日頃から内省を繰り返している人なら、問題の兆候に気づいて先手を打っていることがあるでしょう。様々な視点を持つ人々の気付きを共有する方法として、リスクコミュニケーションやリスクチェーンモデルがあります。
◆小さな気付きが大きな問題を防ぐ
リスクは突然大きな問題になるのではなく、小さな兆候が積み重なって表面化します。これらの兆候に気づくには、専門的な分析だけでなく、日頃の習慣が効果的な場面があります。
・組織の方針に違和感を覚える
・顧客の反応に変化を感じる
・仕様書や契約書の曖昧さに気付く
・メンバーの負荷状態を感じ取る
・データの傾向がいつもと違うと気付く
こうした気付きを日頃からチームで共有する場を設け、戦略マネジメント、プロセスマネジメント、継続的改善といったそれぞれの場面で実施するリスクマネジメントに組込みましょう。
日頃からリスクマネジメントを習慣にしている組織は、不確実な状況に強く、変化の中に新たな機会を見つけて価値を生み出すことができます。
第Ⅲ部 リスクマネジメントを習慣にする実践ノウハウ
第Ⅲ部では、リスクマネジメントを仕組みとして組織に定着させる方法を扱います。戦略マネジメントや組織マネジメントの理論を実践に結び付けて、「リスクマネジメントを、特別な活動ではなく日常に埋め込む」ことを可能にするものです。日々の会議、顧客との対話、設計資料の作成、運用の監視等、現場の動きの中で自然とリスクに対応できるように、習慣化するための勘所を解説します。
第11章 戦略マネジメント
日頃から、チームが同じ方向を目指して、戦略的に価値を生み出すことができたら素敵だと思いませんか。
肝となるのは、社会的な高い視座の目的と目の前にある組織の目的を両立することです。これを実現する実践ノウハウを解説します。
11.1 戦略マネジメントの基本-シナリオプランニング
戦略マネジメントで最初に押さえておきたいポイントは、未来は予測するだけでなく、自らの意思で描くことができる点です。中長期的な目標達成に向けたシナリオを描くと同時に、比較的予測しやすい当年度の目標を達成するための計画と両立させましょう。
未来を自らの意思で描くための拠り所とする基礎知識として、シナリオプランニングを紹介します。シナリオプランニングとは、「将来を正確に予測することは不可能である」という前提に立ち、政治・経済・社会・技術等の視点から、互いに異なる複数のシナリオを描く手法です。複数のシナリオを試してから最終的に一つに絞るのか、あるいは最初から一つのシナリオに賭けるのか、その選択に自らの意思が反映されます。
シナリオプランニングの考え方を活用して戦略マネジメントを実践する方法の一つが、施策と指標をセットにした戦略ロードマップの作成です。当年度については比較的予測がしやすいため、実現可能性の高い施策とすることができるでしょう。さらに、当年度の目標を達成するだけでなく、次年度以降の土台となる施策とすることで、シナリオの実現可能性が高まります。
次年度以降の望ましいシナリオにつなげるためには、指標の設定方法にもコツがあります。課題やリスクへの対策効果を最初から求めてしまうと、当年度に達成できそうな目標のための施策になりがちです。中長期的な目標達成に向けて、土台となる施策の実施件数や実施率を管理することから始め、効果を示す指標へ段階的に変化させていきましょう。これらをやり続けるかどうかで、結果が変わります。
11.2 施策と結果の関係を見る-BSC(Balanced Score Card)
施策の効果を意味あるものにするために押さえておきたいポイントは、各施策を、その目標達成によって得たい結果と関連付けることです。施策をそもそもの目的と結び付けて理解し実行することによって、ビジネスで結果を出すことを追求しましょう。
施策と結果の関係を見るための拠り所とする基礎知識として、BSC(Balanced Score Card)を紹介します。BSCとは、売上や利益といった財務の視点だけでなく、顧客・社会の視点、内部プロセスの視点、学習と成長の視点といった非財務の視点も交え、バランス良くビジネス指標を管理するフレームワークです。財務的な結果を追うだけでなく、良い結果を生み出すために必要な施策や活動を管理する視点を提供する点に特徴があります。
BSCの考え方を活用して戦略マネジメントを実践する方法の一つが、戦略ロードマップに売上・利益等の財務の視点で、組織方針・目標としてのビジネス指標を併記することです。また、顧客満足度等の顧客・社会の視点で設定した指標も、あらゆる施策の共通目的となるでしょう。シナリオを実現するための各施策は、内部プロセスの視点に位置づけ、財務の視点や顧客・社会の視点で設定した指標との因果関係が分かるように記載します。
さらに、学習と成長の視点では、人材育成の施策を評価するために、従業員満足度等の指標を設定します。戦略を立案し実行するのは人です。人への投資を戦略的に行い、シナリオの実現可能性を高めましょう。これらをやり続けるかどうかで、差が広がります。
11.3 施策への納得感を高める-創発戦略論
シナリオの実現可能性を高めるために押さえておきたいポイントは、施策が合理的であることに加え、施策を実施するチームの納得感を高めることです。上位の理念・方針への納得感と、具体的施策への納得感を両立させましょう。
施策への納得感を高めるための拠り所とする基礎知識として、ヘンリー・ミンツバーグの創発戦略論を紹介します。創発戦略論とは、所定の計画プロセスやデータ分析結果に従うよりも、試行錯誤の結果や想定外の出来事から学んだことを重視してパターン化する考え方です。不確実性が高い状況において、精緻な計画よりも行動を伴う学びを重視することが特徴です。会議室での議論で戦略が策定されるのではなく、現場での行動の結果として戦略が導き出されます。
創発戦略論の考え方に基づいて戦略マネジメントを実践するには、まず上位の理念や方針を定めて方向性を示し、その背景や目的について事業に関わる人へ丁寧に説明します。そのうえで、現場のチームが目的達成に向けて工夫しながら施策を具体化できる余地を残します。例えば、戦略ロードマップに記載する施策は抽象度が高いものにして、具体策の選択肢を広くしておくことで、創意工夫しやすくなります。
さらに、現場のチームが発見した事実や気付きを、戦略に反映します。例えば、顧客から明らかに不評な製品・サービスについては、速やかに開発への投資を見直した方が、現場のチームの納得感は高まります。現場の声を戦略に反映することを繰り返し、戦略ロードマップに記載する施策の具体性を高め、良い意味で上意下達の動きができる組織を目指しましょう。これらをやり続けるかどうかで、確実に差が広がります。
11.4 戦略って誰が考えるの?
戦略マネジメントは、しばしば「会社の偉い人達だけの仕事」「戦略部門や企画部門の人達だけの仕事」となりがちです。これらに加えて、「現場での発見が優れた戦略を生み出す」ことを大切にしましょう。
企業理念やパーパスは、経営トップが考えて社員に浸透させるものです。市場におけるポジショニングは、事業トップが意思決定する責任を負います。行動計画は、企画スタッフが取り纏めることが多いでしょう。こうした戦略を構成する各要素に、現場のリアルな事柄を反映することで、より実践的で地に足の着いた戦略とすることができます。その結果、戦略は創発的に実現され、チーム一丸となって取り組む文化が醸成されるのです。
戦略マネジメントは、チームが同じ方向を目指して、戦略的に価値を生み出す基盤となります。
第12章 プロセスマネジメント(定義編)
日頃から、一つ一つの業務の価値がつながって、大きな価値に結びついたら素敵だと思いませんか。
肝となるのは、広い視野で俯瞰する思考と、個々の緻密な設計を両立することです。これを実現する実践ノウハウを解説します。
12.1 プロセスマネジメント(定義編)の基本-バリューチェーンモデル
プロセスマネジメント(定義編)で最初に押さえておきたいポイントは、事業活動が途切れることなくつながって価値を生み出すという考え方です。全体を俯瞰して体系的に整理したうえで、個々の決めごとを具体化しましょう。
事業活動を途切れることなくつなぐための拠り所とする基礎知識として、バリューチェーンモデルを紹介します。バリューチェーンモデルとは、全般管理(総務、法務、品質等)、人材開発、技術開発、調達といった支援活動と、購買物流、製造、出荷物流、販売、サービスといった主活動が連鎖することで価値を生み出すという概念です。支援活動によって生み出される価値が主活動を支え、主活動によって生み出される価値が社会や顧客に提供されます。
バリューチェーンモデルの考え方を活用してプロセスマネジメントを実践するためには、共通のルール・ガイドラインに定めた内容を事業毎のルール・ガイドラインに埋め込みます。共通のルール・ガイドラインは、総務、法務、経理等の支援活動を行う部門が策定します。事業毎のルール・ガイドラインに対して、必須の役割と体制、会議体、意思決定の手続き、業務手順、管理基準、使用ツール、相談窓口等の要件を定めるものです。一方、事業毎のルール・ガイドラインは、事業部門が主活動を行う事業プロセスを定めるものです。これには、業務工程、担当者、承認者、材料・インプットデータ、成果物・アウトプットデータ、業務手順、管理基準、使用ツール、会議体を含むコミュニケーション機会等を具体化した内容を含みます。このように構成することで、縦割りになりがちな共通のルール・ガイドラインによる業務の中断を減らし、事業活動の連鎖をスムーズにすることができます。
事業毎のルール・ガイドラインは、共通のルール・ガイドラインに従うだけでなく、独自の価値を生み出すための創意工夫を盛り込んだものです。だからこそ、共通のルール・ガイドラインは、事業活動の独自性を妨げずに埋め込めるように配慮して策定します。さらに、共通のルール・ガイドラインを策定する部門は、事業毎のルール・ガイドラインの策定を支援する役割を担い、ガバナンスを強化することができます。こうして、事業活動の現場が価値創出に集中できるプロセスを作り上げましょう。これらをやり続けるかどうかで、結果が変わります。
12.2 独自の工夫をする-RBV(Resource Based View)
独自の価値を生み出すために押さえておきたいポイントは、価値を生み出せるプロセスとなるように工夫をすることです。事業の強みとなる独自のプロセスを定義することと、類似事業のプロセスを流用して効率よく活動することを使い分けましょう。
価値を生み出せるプロセスの拠り所とする基礎知識として、RBV(Resource Based View)を紹介します。RBVとは、他企業と差別化して事業の強みとなる経営資源の特性を、経済価値、希少性、模倣困難性、組織といった4つの視点で整理したものです。業務のプロセスも経営資源の一部と捉えると、経済価値、希少性、模倣困難性があるプロセスが組織に定着している状態は、事業の強みであると言えます。
RBVの考え方を活かして独自の工夫を含んだプロセスを定義するためには、強制力のあるルールと、適宜適用するガイドラインを使い分けます。まず、強制力のあるルールとしては、実施を義務付ける業務、業務の実施体制、意思決定の手続き、定型的業務の手順を定めるとよいでしょう。これらは、創意工夫して差別化できる要素が少なく、むしろコンプライアンスのために安定させたいものです。そのうえで、適宜適用するガイドラインとして、業務を実施する方法、必要な知識・スキル、責任者や担当者向け教材、実施事例と失敗事例を充実させ、具体的な実施手段について創意工夫した結果を組織で共有します。さらに、事業の強みとなる結果が得られたら、手段限定したり抽象化したりして、強制力のあるルールに加えることもできます。
RBVの4つの視点で事業の強みを創り出すための取り組み方は、以下のどおりです。創意工夫を積み重ねて、本質的な強みを育てましょう。これらをやり続けるかどうかで、差が広がります。
・経済価値
リスクベースで事前検討・事前対応する手法・方法論により、機会を先取りする
・希少性
実践から得た気付きを反映して手法・方法論を改良し、他に類を見ないものにする
・模倣困難性
対話を重ねて手法・方法論の実践ノウハウを伝達し、暗黙知を共有する
・組織
ガイドラインの活用を推奨し、エキスパートが支援することで組織に定着させる
12.3 社外パートナーと連携する-取引費用理論
事業の強みを活かすために押さえておきたいポイントは、社会や顧客へ価値を提供するにあたり、社外パートナーと連携する必要があることです。自社の強みを活かすことと、社外パートナーの強みを活かすことを使い分けましょう。
社外パートナーと連携して強みを活かす際の拠り所とする基礎知識として、取引費用理論を紹介します。取引費用理論とは、市場で取引をする際にかかるコスト(取引費用)に着目して、自社で実施するか他社から調達するかは、どちらが低コストで済むかによって決まると考える理論です。この取引費用を左右する要因の一つに「機会主義の脅威」があります。機会主義の脅威とは、取引先が相手の弱みにつけ込んで、だましたりごまかしたりすることです。例えば、他に代わりが無い技術であることを利用して、不当に価格を吊り上げたり手を抜いたりすることが該当します。機会主義の脅威というリスクに対応するための取引費用を最小化するように、取引形態や管理方法を選択することが合理的です。
取引費用理論に基づいて社外パートナーとの連携の在り方を考えると、企業が互いに強みを活かして助け合い切磋琢磨することが理想的です。すでに自社で保有している技術やノウハウを用いるため、追加の取引費用は最小限で済みます。さらに、互いの強みを活かして互恵関係を築くことによって、機会主義の脅威そのものを減らすことができます。
社会や顧客へ価値を提供するために、社外パートナーとの連携は必須です。独自の技術やノウハウの活かし方として、自社で囲い込むだけでなく、広く社会のために活用するという選択肢を持っておきましょう。これらをやり続けるかどうかで、結果が変わります。
12.4 現実的に実行可能なプロセスにするには?
プロセスの定義は、しばしば「誰でも実行できる手順を作る」「無駄を徹底的に省く」に偏りがちです。これらに加えて、「創意工夫できる余白を残す」ことを大切にしましょう。
決められたルールに基づいて作業をするためのリソースを確保することは、最低限必要なことです。ヒト(力量と人数)、モノ(ハードウェア・ソフトウェア)、カネ(投資と費用)、データ(社外データ・社内データ)といったリソースが足りていることを確認するプロセスを整えることも、プロセスマネジメントに含まれます。
損益に責任を負う事業部門の判断だけでは、最低限必要なリソースになりがちです。創意工夫して価値を生み出すためには、リソースの余裕や柔軟性を確保する方針を、ガバナンスの一環として示しましょう。余裕を持ってリソースを計画しておくことは、失敗による手戻りや作業効率の低下といったリスクへの対応力にもつながります。自由に使える余白があるからこそ、失敗を過度に恐れることなく、創造的に価値を生み出そうとする意欲が湧くのです。
プロセスの定義は、一つ一つの業務の価値がつながって、大きな価値に結びつけるための基盤となります。
第13章 プロセスマネジメント(管理編)
日頃から、一人一人の想いが大切に扱われ、仕事の価値に誇りを持てたら素敵だと思いませんか。
肝となるのは、人への思いやりと合理的な思考を両立することです。これを実現する実践ノウハウを解説します。
13.1 プロセスマネジメント(管理編)の基本-日常管理・審査・監査
プロセスマネジメント(管理編)で最初に押さえておきたいポイントは、管理業務そのものの効率性と有効性を両立することです。日常業務の成果物・データを活用しながら、審査や監査の準備をしましょう。
管理業務そのものの効率性と有効性を両立するための拠り所とする知識の枠組みとして、日常管理・審査・監査について解説します。日常管理とは、各部門において日常的に実施される管理活動です。例えば、定例ミーティングや進捗報告、チームメンバーによる成果物のピアレビュー等が挙げられます。審査とは、業務の節目において課題やリスクを確認する活動です。例えば、企画承認や工程移行の判断を行う意思決定会議、責任者や有識者によるデザインレビュー等があります。監査は、業務が適切に実施されているかを第三者が確認する活動です。例えば、マネジメントシステム規格に基づく内部監査や、情報システムを対象としたシステム監査が該当します。
日常管理・審査・監査という枠組みで管理業務の効率性と有効性を両立するには、業務プロセスの実績や成果物をデジタル化してデータ品質を管理します。データ品質を管理するとは、正確なデータが漏れなく保管され、必要な情報を検索・参照できる状態を維持することです。日常管理においては、業務の流れの中で実績や成果物をデジタル化し、いつでも参照可能な状況にしておくことで、日常管理だけでなく審査や監査の準備も効率化できます。審査や監査では、現場・現物・現実に即した実績や成果物を閲覧できる環境を活用し、具体的な課題・リスクの把握につとめ、有効性を高めることができます。
ただし、現場・現物・現実に即した実績や成果物だけでは、その中から重要な課題・リスクを見つけることに時間を要し、審査や監査の効率性を犠牲にすることになります。現場の意思に基づいてAIを効果的に活用し、審査や監査を効率的に行うための概要資料を準備しましょう。これらをやり続けるかどうかで、確実に差が広がります。
13.2 チームへの関わり方-ファシリテーション
ガバナンス担当者が課題・リスクに対応するうえで押さえておきたいポイントは、チームメンバーとの立場の違いを踏まえた関わり方です。事前に課題・リスクに気付くことと、独立的な立場で結果を確認することのバランスを意識しましょう。
ガバナンス担当者が現場のチームとうまく関わるための拠り所とする基礎知識として、ファシリテーションを紹介します。ファシリテーションとは、「話し合いの場において、参加者の意見や知見を引き出し、合意形成を促進すること」です。多くの文献やセミナーで、問いかけ方のテクニックが紹介されていますが、テクニックに頼りすぎると不自然になってしまいます。場を立ち上げる、意見を共有する、発想を広げる、結論へと誘う、という4つの基本動作を意識し、自分の個性を活かした問いかけ方を身に付けることで、自然に振る舞うことができます。
ファシリテーションの考え方で現場に関わることによって、ガバナンス担当者が自分の意見を主張しすぎることなく、現場が主体的に課題・リスクを事前検討・事前対応するよう促すことができます。例えば、日常管理においてガバナンス担当者がチームの定期ミーティング等に参加し、客観的な視点で課題・リスクへの気付きを促すことは効果的です。ただし、いかにも「私がファシリテーターです」という態度で接するよりも、さりげなくファシリテーションを行う方が自然です。
一方、現場が多くの困難を抱えている場面では、ガバナンス担当者自身の見解として課題・リスクを指摘します。日頃からファシリテーションの考え方に基づき現場を尊重して関わっていることで、厳しい指摘であっても受け止められやすくなります。その結果、現場が課題・リスクへの対応を早期に行えるようになり、審査や監査の場面での指摘事項の減少につながります。こうした日頃からの効果的な関わり方によって、手戻りによるロスを減らしましょう。これらをやり続けるかどうかで、差が広がります。
13.3 やらされ感を防ぐ-モティベーション理論
課題・リスクへの早期対応を持続するために押さえておきたいポイントは、事業に関わる人のやらされ感を防ぐことです。適切な行動につなげる動機づけと、ルールや基準に従うよう指示することを使い分けましょう。
事業に関わる人のやらされ感を防ぐための拠り所とする基礎知識として、モティベーション理論を紹介します。モティベーション理論とは、「人はなぜ行動するのか」を説明する理論で、古典的なものとしては、マズローの欲求5段階説やハーズバーグの二要因理論が有名です。ここでは、比較的新しい4つの理論の概要を説明します。目標設定理論は、目的や目標が行動を導くと考えるもので、納得感のある目標に向かって努力することを指します。強化理論は、行動の結果が次の行動を導くと考えるもので、人は自分の行動が評価されると、再び同じ行動を取ろうとする傾向があります。期待理論は、結果への期待が行動を導くと考えるもので、自分にとって価値がある結果が見込める場合に行動すると説明します。公平理論は、他者との比較が行動を導くと考えるもので、自分だけでなく他者も同様に取り組むのなら行動するという心理を表します。「理論」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、どれも日常的な感覚として理解できるのではないでしょうか。
モティベーション理論の考え方に基づき、各業務の目的、手段、前提条件、公平さに着目することで、モティベーションを左右する要因を確認することができます。例えば、目的が曖昧な状況、目的達成に必要な手段や前提条件が欠けている状況、誰かに負担が集中している状況においては、チームのモティベーションは低下しがちです。
また、モティベーションの要因には個人差がある点にも配慮します。例えば、目的さえ明確なら手段は自分で考えたい人もいれば、手段が明確な方がやりやすいと感じる人もいます。こうした個性を踏まえ、「組織が示す目的・手段」と「個人が望む目的・手段」を、モティベーションの観点で結び付け、適材適所に人材を配置しましょう。これらをやり続けるかどうかで、結果が変わります。
13.4 手抜き・ごまかしを防ぐ-エージェンシー理論
組織が示す目的・手段を浸透させるために押さえておきたいポイントは、目的の達成や手段の順守における手抜き・ごまかしを防ぐことです。個人の考え方を本音で聞き出す場と、公式に課題・リスクを確認する場を使い分けましょう。
手抜き・ごまかしを防ぐための拠り所とする基礎知識として、エージェンシー理論を紹介します。エージェンシー理論は、プリンシパル(委託者)とエージェント(代理人)との関係によって起こりえる問題とその解決策を説明する理論です。一般には株主(プリンシパル)と経営者(エージェント)の関係を扱いますが、経営者と管理職、管理職と部下の関係にも当てはまります。エージェンシー理論では、目的の不一致、リスク回避性向の不一致、情報の非対称性が、エージェントが手抜き・ごまかしをすることにつながるとしています。
エージェンシー理論の考え方を活用して、手抜き・ごまかしを防ぐためには、目的の不一致、リスク回避性向の不一致、情報の非対称性の存在に気付くことが第一歩です。これらの存在による利害不一致があるかもしれないと、組織の不協和音や発言・態度の変化から感じた場合は、一人ずつ意見を聞くことが必要です。プリンシパルとエージェントそれぞれの本音を聞くことが、利害不一致の要因を明らかにする手がかりになります。
本音を聞くためには、日常管理や審査・監査とは別の非公式な場で、当事者のみで記録を共有し無断で口外しないことを宣言します。組織が示す目的・手段に対する個人の問題を追求するのではなく、それぞれの個人が望む目的・手段の相違という関係性の問題に気付くことが目的です。関係性の問題として課題・リスクを捉え、解決策の検討をする段階になってから、日常管理や審査・監査で公式に扱い始めます。近年では、デジタルフォレンジックを活用し、メール等の履歴を元に異変を検知することも可能ですが、プライバシーにも配慮したうえで個人が望む目的・手段を尊重しましょう。これらをやり続けるかどうかで、結果が変わります。
13.5 部分最適化を防ぐ-ゲーム理論
個人が望む目的・手段を尊重するうえで押さえておきたいポイントは、組織全体のパフォーマンスを低下させる部分最適化を防ぐことです。各業務の間にある矛盾を把握したうえで、各業務を個別に評価しましょう。
部分最適化を防ぐための拠り所とする基礎知識として、ゲーム理論を紹介します。ゲーム理論とは、複数の人や組織が互いに影響し合う状況で、どのような選択をするのが合理的かを分析する理論です。部分最適化を想起させる有名な例として、囚人のジレンマがあります。2人の容疑者が別々に取り調べを受けている状況で、互いに黙秘すれば最も刑が軽くなるにも関わらず、「自分だけ得をしたい」と考えて自白した結果、双方に重い刑が科されてしまうという現象を示しています。
囚人のジレンマから得られる教訓は、組織全体の利益を考えて互いに話し合い合意することで、部分最適化を防ぎ得るという点にあります。こうした対話のきっかけとして、定性的情報と定量的データを俯瞰して矛盾を見つけることが有効です。これにより、組織の目的・目標に対する課題やリスクへの気付きが得られます。例えば、「個々のデータは良い状況を示しているが、組織の士気は低い」、「個々のチームは良くやっているが、データは悪い状況を示している」といった状況は、根深い課題・リスクを抱えている可能性を示しています。
日常管理・審査・監査それぞれの場面で俯瞰して考えることは、多くの組織に関わりを持つガバナンス担当者の重要な役割です。矛盾が放置されて根深い課題・リスクとして解決困難になる前に、矛盾を解消するアイデアを検討し、問題解決だけでなく価値創出の機会を作りましょう。これらをやり続けるかどうかで、結果が変わります。
13.6 連携を強める-ソーシャルネットワーク理論
矛盾を解消するアイデアを価値創出につなげるために押さえておきたいポイントは、矛盾に関わる組織や業務の連携を強めることです。組織間や業務間の良好な関係を築くという観点で、問題がある組織や業務を特定して是正しましょう。
連携を強めるための拠り所とする基礎知識として、ソーシャルネットワーク理論を紹介します。ソーシャルネットワーク理論とは、人や組織のつながり方をネットワークとして捉え、その構造を分析することによって社会現象を説明する理論です。ネットワーク分析の代表的な概念には、中心性、凝集性と結合性、同値性と共起性があります。中心性とは、ネットワークの中心的な人物や組織が影響力を持つことを示します。凝集性と結合性は、密につながっている集団が影響力を持つ現象を説明する概念です。狭い範囲でつながり凝集性が高い集団は内部での同調圧力が強まり、広くつながりを持った結合性が高い集団は広く影響を及ぼします。同値性と共起性によれば、役割分担が類似だと、責任者や担当者を入れ替えても似た現象が起こる傾向を説明できます。概念を示す用語だけを見ると難しそうですが、その意味は直観的に理解できるものではないでしょうか。
ネットワーク分析の概念は、連携すべき人や組織、矛盾に関わる人や組織を見極めることに役立ちます。まずは、連携すべき立場の人を広く集め、議論を封印して意見交換することから始めます。このような対話を通じて、矛盾に対する共通理解を深めることができます。そのうえで、矛盾に関わっている人を集めて建設的な話し合いをリードすることで、矛盾を解消するアイデア創出につなげることができます。
利害関係が複雑で根深い課題・リスクがありそうな場合、その背景には目的の不一致という矛盾が存在していることがあります。それぞれが考えている目的を互いに確認し、目的の不一致がある場合は、上位の目的を確認したり、異なる目的を両立するアイデアを出し合ったりしましょう。これらをやり続けるかどうかで、結果が変わります。
13.7 プロセスマネジメントって誰の責任?
プロセスの管理は、しばしば「ルール遵守をモニタリングする」という極端な考え方に陥りがちです。これに加えて、「協力して価値を生み出す」ことを大切にしましょう。
ガバナンスの一般的な枠組みとして、3ラインモデルが広く知られています。プロセスマネジメント(管理編)の基礎として解説した日常管理(第1ライン)と審査・監査(第2ライン)に加え、より独立性の高い監査を行う第3ラインを組み合わせたものです。かつては、3ラインディフェンスモデルが一般的でしたが、守りだけでなく攻めの観点も重要という意図で3ラインモデルに発展しました。単なる名称変更だけでなく、第1ラインと第2ラインの過度な独立性はガバナンス機能を弱くする懸念があるとし、互いに協力することの重要性を示しています。
こうしたモデルの変化が示すどおり、コンプライアンスのための牽制だけでなく、協力して社会や顧客へ価値を提供する責任を果たすことが、プロセス管理の本来の在り方です。
プロセスの管理は、一人一人の想いが大切に扱われ、仕事の価値に誇りを持てるようになるための基盤となります。
第14章 継続的改善
日頃から、少しずつ改善を積み重ねることによって、価値を高め続けることができたら素敵だと思いませんか。
肝となるのは、直面している問題の改善と、将来に向けた改善を両立することです。これを実現する実践ノウハウを解説します。
14.1 継続的改善の基本-PDCAとOODA
継続的改善で最初に押さえておきたいポイントは、改善を繰り返し積み重ねるための型を使いこなすことです。過去の実績から学び計画的に行動する型と、刻々と変化する状況へ即座に対応する型を使い分けましょう。
改善を繰り返し積み重ねるための型として、PDCAサイクルとOODAループを紹介します。PDCAサイクルとは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)という4フェーズを繰り返すことで、過去の実績から学び計画的に行動する方法です。Plan(計画)をStandardize(標準化)に置き換えて、毎回新たに計画するのではなく、組織の標準的な手順を見直しながら行動するSDCAも良く知られています。一方、OODAループは、PDCAサイクルとは根本的な発想が異なります。Observe(観察)→Orient(判断)→Decide(決定)→Act(行動)を繰り返し、刻々と変化する状況へ即座に対応する行動様式です。
これら2つの型のどちらを優先するかを、戦略マネジメントとプロセスマネジメントとの間で一致させることで、戦略の意図と現場の行動を合わせることができます。もし、戦略マネジメントではPDCAサイクルに基づく計画重視の運用をしているにもかかわらず、現場のプロセスマネジメントでOODAループ的な迅速な意思決定を優先していると、戦略の意図と現場の行動の乖離が生まれやすくなります。
どちらの型が適しているかは、事業を取り巻く環境に左右されます。環境が安定して変化が少ない成熟期は、PDCAサイクルの仕組みで着実に行動する方法が適しています。ただし、事業変革の機会を捉えるためには、OODAループの発想で迅速に計画変更の意思決定ができるようにします。一方、変化の激しい変革期は、OODAループの発想で迅速に判断し行動します。そのうえで、事業を成熟させて安定収益化する準備を進めるために、PDCAサイクルの仕組みを併用します。2つの型の良いところを活かしながら、意味ある改善を積み重ねましょう。これらをやり続けるかどうかで、確実に差が広がります。
14.2 一人一人の知恵を活用する-SECIモデル
意味ある改善を積み重ねるために押さえておきたいポイントは、一人一人の創意工夫から生まれる知恵を活用することです。実践で得られた知見を仕組みに反映するとともに、仕組みに見直すべき点がないかを定期的に確認しましょう。
一人一人の知恵を活用するための拠り所となる基礎知識として、SECIモデルを紹介します。SECIモデルは、組織の中で知識がどのように創造・共有されるかを説明したナレッジマネジメントの理論です。共同化(Socialization)→表出化(Externalization)→連結化(Combination)→内面化(Internalization)といった4つのフェーズで、形式知と暗黙知が相互に変換されるサイクルを繰り返し、組織の学びがスパイラルアップしていくことを示しています。形式知は言葉や図表で表現された知識、暗黙知はそれらで表現されていない知識と考えると、区別が容易です。
SECIモデルを組織の活動に当てはめると、次のように整理できます。
・共同化:新たな方法を実践して人から人へ伝承
・表出化:事例を共有して標準化しルールやガイドライン作成
・連結化:ルールやガイドラインをマネジメントシステムに統合
・内面化:ルールやガイドラインの方法を実践して習熟
これらの活動は、多くの組織で日頃から実践されているのではないでしょうか。もし活動が分断されている場合には、SECIモデルの考え方に基づいて丁寧につなぎ合わせることで、暗黙知が活かされる組織に変わっていくことができます。
さらに、文書や図表で表すことが難しい暗黙知の扱い方が、価値創出の鍵となる場合があります。扱う対象が暗黙知であるため、その扱い方の具体例も暗黙知です。実践の場面で共同化に留まることによって、暗黙知を暗黙知のまま大切に扱い、大きな機会につなげましょう。これらをやり続けるかどうかで、結果が変わります。
14.3 成熟と変革のサイクルを回す-ダイナミック・ケイパビリティ
暗黙知を大きな機会につなげるために押さえておきたいポイントは、事業の成熟と変革のサイクルを回すことです。事業環境変化に合わせた管理方法と、事業環境変化に揺るがない安定した管理方法を使い分けましょう。
事業の成熟と変革のサイクルを回すための拠り所となる基礎知識として、ダイナミック・ケイパビリティを紹介します。企業が事業環境の変化に適応し続ける能力を、感知(Sensing)、捕捉(Seizing)、変容(Transforming)の3つの要素で説明する理論です。感知(Sensing)は、新しい機会を発見又は創造する能力を示します。捕捉(Seizing)は、その機会を活用し、新しい製品・プロセス・サービスへの投資を意思決定する能力です。変容(Transforming)は、新しいルーティンを構築して安定収益化することを意味します。ダイナミック・ケイパビリティの中核は、既存のルーティンを遂行する能力だけでなく、新しい機会に投資して新しいルーティンを構築する能力にあります。
ダイナミック・ケイパビリティの3つの要素によって、事業の成熟期と変革期で管理方法を使い分ける考え方を整理できます。まず、成熟期にウォーターフォール型の安定したルーティンを実行する中で、日頃から機会と脅威の両面でリスクマネジメントを行う習慣が、感知(Sensing)の能力を高めます。新しい機会へ投資する際は、アジャイル型の活動を始めるとともに、戦略マネジメントとプロセスマネジメントをOODAループの発想にして、捕捉(Seizing)としての意思決定を迅速に行えるようにします。そして、新しい事業が成長し始めたら、効率的に安定収益化するためにウォーターフォール型のルーティンを整備し、事業を成熟させることが変容(Transforming)につながります。こうした管理方法の使い分けは、自社だけでなく、顧客が成熟期か変革期かに合わせて行うことが必要な場合もあります。
感知(Sensing)から捕捉(Seizing)に至る変革の初期段階では、新しい価値の姿はまだ暗黙知として共有されているでしょう。こうした状況では、暗黙知を暗黙知のまま扱うことで、より大きな価値を生む機会を見出すことができるのです。日頃からコミュニケーションを重視したリスクマネジメントを行い、暗黙知から大きな価値を生み出しましょう。これらをやり続けるかどうかで、未来が変わります。
14.4 継続的改善ってどれくらいの周期でやるの?
継続的改善は、しばしば「定期的に課題を棚卸しして改善する」という形式的な考え方に陥りがちです。これに加えて、「日頃から改善を積み重ねる」ことを大切にしましょう。
多くの企業では、戦略マネジメントとプロセスマネジメントの各活動において、企業会計の周期と連動した年次~月次のサイクルと、チーム単位で日常業務をマネジメントする週次~日次のサイクルが存在します。これらの活動を分断することなく、互いに連携させることが、TQMの骨格となるのです。
連携を確実にするために報告会や連絡会のような会議体を設ける方法は分かりやすいものの、やりすぎると無駄な会議の増加につながります。各活動に関する資料や情報を共有し、日常的なコミュニケーションを通じて、必要な時に必要な分だけ連携する方が効率的です。ガバナンス担当者は、そのためのハブとなることができます。
継続的改善は、少しずつ改善を積み重ねることによって、価値を高め続ける基盤となります。
第15章 チェンジマネジメント
日頃から、おかしいと思っていることは見直して、スッキリした気分になれたら素敵だと思いませんか。
肝となるのは、緻密に考え抜く思考と、分かりやすい行動を両立することです。これを実現する実践ノウハウを次ページ以降で解説します。
15.1 場当たり的な対応を防ぐ-システム思考
チェンジマネジメントで最初に押さえておきたいポイントは、構造的問題を発生させる場当たり的な対応を防ぐことです。問題を発生させる構造を分析したうえで、個別の問題への対策を行いましょう。
構造的問題を発生させる場当たり的な対応を防ぐための拠り所となる基礎知識として、システム思考を紹介します。システム思考とは、「個別の事象」を問題として扱うのではなく、「構造が個別の事象を生み、その事象がもたらす結果が構造を強化する」という循環に着目し、構造的問題として扱う考え方です。構造的問題を生み出す代表的な10種類のパターンが、システム思考のフレームワークとして知られています。例えば、最初からやりすぎると、その効果が遅れて現れる頃に過剰な反応が起きて、さらなる問題を生み出してしまうというパターンがあります。これらのパターンは、「良かれと思って行った」「波風立てないために行った」「自分にできる範囲で対応した」といった、本人に悪気の無い行動であっても、意図せず悪循環を生み出し得ることを示しています。
それぞれのパターンに該当しそうな仕組みを探すことで、改革を阻害する仕組みに気付くことができます。例えば、責任範囲が不明確な組織や活動は、「主体的に関わらない」要因になります。増え続けたチェックリストは、「調子に乗ってやりすぎる」や「やりっぱなしで見直さない」の典型例です。報告することが目的化した報告は、「数字だけ辻褄を合わせる」ことを助長しかねません。これらの問題は、ほとんどの組織に程度の差こそあれ存在し、構造的で根深い問題として改革を阻害し得ます。
構造的問題は、仕組みの構造を再設計し、負の循環を断ち切って新たな正の循環を生み出すことで解決します。「組織構造と人材像・キャリアパス」「ルールとガイドラインの全体構成」「情報システム全体のアーキテクチャ」という3つの領域について、それぞれの構造を俯瞰的に描き、改革の方向性を定めましょう。こうした大きな一歩を踏み出すかどうかで、改革の成否が決まります。
15.2 納得感のある改革のために-センスメーキング理論
改革の方向性を定めるうえで押さえておきたいポイントは、納得感のある改革を実現するための進め方です。目前の課題解決を起点として改革につなげるシナリオを大切にし、日常業務から離れた取り組みは必要最小限にしましょう。
納得感のある改革とするための拠り所とする基礎知識として、センスメーキング理論を紹介します。センスメーキング理論とは、行動と学びを繰り返すことで望ましい姿を実現していくプロセスを説明する理論です。自らの在り方(Identity)、行動とそれがもたらす影響(Enactment)、社会的な関係性(Social)、行動の後で意味付け(Retrospect)、もっともらしさ(Plausibility)、部分的な手がかり(Extracted cues)、常に進行中(Ongoing)という7つの要素が交わった、心理学、社会学、哲学の知見を基盤とする抽象度の高い概念です。正確に解説するとかえって分かりにくくなるため、実務に応用するための簡潔な解釈を示します。まず、自らのありたい姿を描き、限られた手がかりをもとに主体的に行動することが出発点です。ここで言う「ありたい姿」は、計画的に達成する目標ではなく、自らの在り方(Identity)を示していることが極めて重要です。自らの在り方を起点として行動を始めると、周囲の状況に変化を与えたり、他者と相互に関わったりする中で、何かが起こります。その結果を振り返って意味付けし、ありたい姿を具体化する手がかりを見つけます。このような行動と学習を繰り返すことによって、望ましい姿に近づいていくのです。
センスメーキングの考え方を応用すれば、日頃から実施している改善サイクルを使って戦略的に改革を進め、納得感のある改革へとつなげることができます。まず、前サイクルからの流れで活動計画を立てる際に、ありたい姿を描きます。ここでは、過度に理想を追い求めず、前サイクルから続く課題・リスクの認識に基づいて考えます。次に、ありたい姿に基づいて行動を始め、その実現を阻害する構造的問題を見つけます。さらに、その構造的問題がもたらす意味を振り返り、仕組みの構造を再設計する方向性を次のサイクルにつなげることで、改革の方向性とありたい姿が一致していくのです。
仕組みの構造を再設計するためには、既存の仕組みを一旦解凍して再凍結するシナリオを描きます。日頃から行うリスクマネジメントを通じて複数のシナリオを想定し、2~3年かけて改革を軌道に乗せることを目指しましょう。これらをやり続けるかどうかで、未来は大きく変わります。
15.3 チェンジマネジメントって何から始めるの?
日々、目の前の業務で多忙な中、チェンジマネジメントを始めることには困難を伴うことでしょう。肝となるのは、未来に希望を持って前向きに取り組むために、ありたい姿を描き共有することです。例えば、人とAIが協働する姿には、多くの人が関心を抱いているはずです。
近い将来、AIが様々な業務を自律的にこなせるようになったら、人間がやるべきことは何でしょうか。社会にとって望ましい目的を設定し、その達成に向かってAIが健全に自己進化できるようにリスクマネジメントすることは、人間の役割として重要度を増すはずです。また、将来のありたい姿を描くことは、機会と脅威の両面で創造的にリスクを考えることだと言うことができます。攻守連動リスクマネジメントを始めることが、チェンジマネジメントの第一歩なのです。
おわりに
攻守連動リスクマネジメントを日頃から実践しつつ、戦略マネジメントによって方針・戦略を策定し、プロセスマネジメントで仕組みを構築・運用し、継続的改善とチェンジマネジメントを通じて組織を改善・改革することで、様々なリスクを見極めることができるようになるでしょう。そして、リスクから価値を生み出すための最終的な仕上げとなるのは、ビジネスの現場で使うエンジニアリングの手法・方法論を進化させることです。
要求定義においては、多様なステークホルダが連携し合意形成を図る手法・方法論で、リスク対策を具体化して要件に反映します。設計・製造・運用では、要件に基づいて業務を遂行することに加えて、新たなリスクに即対応できる手法・方法論で、製品・サービスを実現します。検証・評価では、要件に基づいて設計・製造・運用が行われたことを検証するとともに、厳しい条件で評価しリスクを洗い出す手法・方法論で、製品・サービスを改良します。こうしたエンジニアリングが、製品・サービスの価値を作るのです。
ここまで読み進めていただき、ありがとうございます。ビジネスの現場に必要なリスクマネジメントは形式的な管理だけでなく、日々の会議、顧客との対話、設計資料の作成、運用の監視、そうした普段の仕事の中から未来の可能性を見つけ出すことです。ルールに縛られるだけのガバナンスから脱し、生き生きとした現場にするために、最後にこの言葉をお届けします。
リスクマネジメントは、日頃から、機会から、自分から
2026年 5月 20日
DynamicRiskM.
代表 三島 浩一
